山で拾ってきた栃の実は、どのように保存やアク抜きしたら良いでしょうか。実家で聞けた話と、ネット上の情報を元にまとめます。
※私自身は、自分でアク抜き作業をしたことはありません。栃拾いや皮むきは、実家にいた頃(10年以上前)に手伝ったことがあります。餅つきだけなら、近年も手伝っています。
参考
1)トチもちづくり:「総合的な学習の時間」の一試行 – 奈良教育大学付属自然環境教育センター紀要 4巻 P15-22(2001年)
只見町ブナセンターの以下のページ
2-1)トチの実のアク抜き作業
2-2)2月13日にトチ餅作りを行いました!
ジャンプできる目次
拾ってきた栃の実を、2日間水に浸ける
山で栃の実を拾ってきたら、バケツなどに入れて水を張ります。
水は流しっぱなしにするか、毎日取り替えます。
この工程で、実に入り込んだ虫を殺すことができます。
また、ここで浮いてくる実は、大きく虫が食っているので取り除きます。
栃の実を1ヵ月天日干しする
晴れた日を狙って天日に干し、夕方には取り込むことを繰り返して、栃の実を乾かします。
私の祖母は、玄関先や屋根にむしろ等を敷いて広げていました。
栃の実の皮がシワシワになって、振ったらカラカラ音がするくらいまで乾かします。
完全に乾かせば何年でも保存ができるそうです。
ちなみに乾燥した重量は、元の6割くらいになるそうです。(参考1より)
イメージ▼(近所の餅屋さんで干していたのを撮らせていただきました)
栃の実の皮をむく
外皮をふやかす
まず、外側の皮を、むくためにふやかします。
(ここでふやかすのは、栗でいう鬼皮の部分だけです。中の実がふやけすぎると、アク抜きの時に溶けてしまうらしいです)
祖母のやり方では、
まず、乾燥した栃の実を、一晩か二晩水につけます。
皮むき当日は、つけた水ごと火にかけます。熱くなったら、冷めないようにとろ火で保温しつつ、皮むきを行います。
参考1)には、熱湯につけて1晩おき、湯に浸けながら道具を使って皮をむく、とあります。栃の皮むきに湯は必須のようです。
皮をむく
実家では、栃の実の皮むきには包丁を使っていました。栗の皮をむくような感じです。
実にへばりついている渋皮も、ある程度包丁で削って取っていました。(全部きれいにしてしまうと風味が減りすぎるので、手加減します)
他には、木づちで叩く、道具を使って押し割る、といった方法もあります。
余談ですが、むいた栃の実が塩気に触れると、アクが抜けなくなってしまうようです。「漬物桶として使っていたようなものは決してトチの実を入れる容器にはしない」とのこと。(参考1より)
皮をむいた栃の実を、2週間水に浸ける
皮がむけたら栃の実を水に浸け、水で取れるアクを抜きます。
水は毎日入れ替えて、泡がなくなり、水がきれいになるまで浸けます。
実家では水を流しっぱなしにしていたかもしれません。
栃の実を苛性ソーダに浸ける
水につけるのが終わったら、次はアルカリで抜けるアクを抜く工程です。
実家では苛性ソーダを使っています。
実家での方法は、まず、水と栃の実を火にかけます。
栃の中まで熱くなった程度で火を止め、アク抜き用の入れ物(プラスチック容器など)に移します。
栃の実がかぶるほどの湯につけ、人肌より少し熱いくらい(測ったことはないけど45℃くらい?)まで冷まします。
適温まで冷めたら苛性ソーダを入れて、数日置きます。
祖母は、アクが抜けたかどうか、栃の実入りのおかゆ「栃粥」を作って味見していました。
アク抜きの液に浸かった栃の実▼(割り箸は、ホコリよけの新聞紙が浸からないようにしたかっただけで、他意はないです)
↑この状態で、液に漬かったまま、冬場は1カ月半ほど経っても問題なく食べられました。
また、液に漬かったままポリ袋に入れて冷凍し、解凍して使う事もできたそうです。(母より)
苛性ソーダの量について
実家では、地元の商店が「栃1升分」として小分け販売してくれる苛性ソーダを、買って使っているそうです。
「1升分」の苛性ソーダの量は「一握りもないくらい」とのこと。
なので、詳しい分量は分かりませんが、そんなに大量ではなさそうです。
木灰や重曹を使う方法
栃のアク抜き、昔ながらの方法では木灰を使うそうです。遠く縄文時代に発明された方法だとか。
参考にした記事では、木灰または重曹を使っていました。
参考1)では、木灰を使って2段階でアク抜きをしています。
最初に濃い灰汁に浸けて1~3日、終わったら1晩流水にさらし、今度は薄い灰汁に2~3日浸けるそうです。
ここまで終わった実は、冬場なら灰汁に浸けたまま、2~3か月は置いておけるそうです。
参考2)では、木灰と重曹を使って、仕上がりを比較していました。(重曹の分量は書いてませんでした)
皮をむいて1週間ほど水にさらした栃の実を、重曹と木灰でそれぞれアク抜きの処理をし、2晩放置。その後、水でアクを洗い流し、2晩ほど水にさらしたようです。
結果としては、重曹を使った実はえぐみが強く、木灰は美味しく食べられたそうです。
(以下は参考2-2より引用です)
アク抜き直後は、とても苦かった木灰と食べれないことはない重曹で、水にさらした後どの程度違いがあるのか皆でパクリ!すると、木灰でアク抜きを行った方が苦くありませんでした。重曹は、苦みが消えず舌に残るえぐみがなんとも言えません;
参考2-2より
重曹で栃のアク抜きができるかどうか?
苛性ソーダを少量ずつ買える薬局が近隣にあれば良いですが、劇物指定の薬品なので、取扱店は限られるかもしれません。
重曹なら手に入りやすいので、これでアク抜きができれば嬉しいです。
重曹はそのままでは弱アルカリ(ph8くらい)、苛性ソーダは強アルカリ(ph13くらい)。
木灰はよく分かりませんが、強アルカリってほどではないかな・・・?
ならば重曹も木灰のように、大量に使えば良いのかも?
あるいは、重曹は加熱するとアルカリ性が強くなるので(どの程度強くなるかは状況によりますが)、重曹液を一度沸騰させて使うなどすると、何とかなるのでは? という気もします。
試す機会があれば、追記したいと思います。
栃の実のアク抜き液を洗い流し、餅に混ぜる
アク抜きができた栃の実は、もち米と一緒について栃餅にします。
実家の場合は、アク抜きの液につけたまま、餅つきの日まで置いておきます。
そして当日、もち米と一緒に蒸す直前くらいに、アク抜きの液を洗い流します。(参考:栃餅の作り方)
祖母曰く、あまりきれいに洗いすぎると、栃の風味まで無くなるそうです。
しつこく洗わず、サラッと洗う感じで行っています。
余談:栃の実を干す場所がないときは
栃の実を干す時、こういう干しカゴも便利です▼
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